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Presents Vol.32

弊社代表 安田のメールマガジン アーカイブです。

安心

信用取引き、などという言葉もあるように、「信用」はビジネスに欠かせない要素です。
また、もちろん個人においてもそれは同じ。
信用こそ、あらゆる関係の基本である。そう言っても過言ではありません。

相手に信頼されること。
そもそも、それを渇望する存在が人間ではないでしょうか。

働く場面においても、信頼は、お金以上の評価となります。
たとえば仕事でがんばり、その結果、無言で1万円を渡されるのと、
「すごくいい仕事だったよ」と声をかけられるのは、どちらがうれしいでしょうか。やる気になるでしょうか。
長い目で見たら、お金だけでは人は働く意欲を持ち続けられません。

たしかにいま、報酬額イコール評価、そんな結果主義がはびこっています。
しかし、そもそも報酬とはそれぞれの仕事に対して適正なのか、はなはだ疑問です。
汗ひとつかかず、パソコンに座って金融取引をして大金を稼ぐ。
それは果たしてお金に見合う仕事なのでしょうか。

貧富の差をあらわすジニ係数が、日本は現在0.42だそうです。
極めてその差が激しいとされるアメリカが0.46。
一億総中流と言われた日本は、いまやアメリカと肩を並べようとしています。
それは結局、ある一部の人間が涼しい顔をして大金を稼ぎ、
残りの大半はまじめに働いて生活ぎりぎりの賃金を得ている。
そんないびつな社会が生まれている証拠です。

こうした社会構造は大きな問題です。
変えていく必要があると思います。

ただ一方で、企業の報酬額と社員定着率は比例しないこともまた確かです。
むしろ、高額の報酬を得ている人間ほど、転職を繰り返す傾向にあります。

コンサルティング会社のリンクアンドモチベーション代表・小笹芳央さんは、
働く意欲をあげるには「意味報酬」が大切だと言っています。
これは、「がんばったな」「いいじゃないか」と言葉で相手を評価してあげること。
他人評価が高ければ、人間は自己評価も高まります。
そうすることで、モチベーションはあがる。
自分がその会社にいる理由がどんどん大きくなるのです。

しかし、残念ながら今、職場に余裕がありません。
成果主義の名の下に、それぞれが目の前の数字をひたすら追わされている。
他人に優しく接することが難しいのです。

人間はもともと安心を求める動物です。
だから会社という集団をつくり、互いに信頼し合うことでその安心を深めます。
しかし、安心の場であるはずの会社が今、不安の場となっている。
この状況は悲劇でしかありません。
隣の同僚が敵であり、互いに疑心暗鬼。
プレッシャーからイライラが募り、他人を平気で傷つける。
そこには他人評価もなく、当然、自己評価もありません。
誰もが下を向いて働く職場、というわけです。

以前から「癒し」がブームになっています。
僕は、癒しとは自己肯定行為であると考えています。
否定されず、すべてを受け入れてもらう。
そこでは、自信を、自己評価を取り戻すことができるのです。
自己評価が普通に得られない世の中だからこそ、この癒しブームは今も終わらないのでしょう。
そうであれば癒しが必要な社会とは、じつは極めて不幸な社会ではないでしょうか。

会社とは、そもそも安心への欲求から生まれ、それを提供する場であるはずです。
極端に言えば、癒しの場だと思うのです。社会や働く人を幸せにする。
その重要度を増し、会社の存在意義というモノを
もう一度根底から考え直してみてはいかがでしょうか。

この時代に、このメンバーでこういうお客様で、
その全ての関連性の中で存在している理由。
働く人にとってもそれを利用する人にとっても社会にとっても
必要であることが、最大の存在理由でしょう。

会社の存在意義をもう一度考え、世の中をよくしていく。
決算書をよくすることだけが会社の使命ではない。
僕はそう考えています。