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Presents Vol.17

弊社代表 安田のメールマガジン アーカイブです。

ブランディング -前編-

[ブランドに人が惹かれる理由]

企業経営において、「ブランディング」が盛んに叫ばれています。

僕自身、最初はこの言葉にあまりいい印象はありませんでした。
ただ上辺をうまく飾るもの、そんな薄っぺらいイメージがあったからです。

けれど、いまという時代をしっかり見つめたとき、
ブランディングこそ人の根源的な欲求に根ざし、これからの経営の命運を握る。
そう理解するようになりました。

人、もの、金。この3つに加え、いま、ブランドエクイティ
(ブランドの持つ経済的価値)こそが新たな企業資産であるとされます。
言ってみれば単なるイメージにすぎないブランドが、
なぜそれほどまでに重要視されるのでしょうか。

その理由は、プラス・プレゼンスにあると考えています。

プレゼンスとは存在感、影響力といった意味です。
“すごい”と人が感じ、心が魅了される。
そんなプラス方向の存在感こそ、
いまという時代に本質的に求められているのではないでしょうか。

“すごい”の例を挙げましょう。

一番わかりやすいのが、巨大な建造物です。
日本で最も人を集められる場所は?
そう訊ねられたら、まず思い浮かべるのは東京ディズニーランドかもしれません。
実際、東京ディズニーシーもあわせたあの壮大なエンターテインメント空間には、
年間約2580万人(2006年)が集います。

しかし、その東京ディズニーランド以上に人を集める場所があります。

それが横浜のランドマークタワー。
日本一高いという理由だけで、このビルにはなんと年間約3160万人
(2006年度のランドマークプラザ・スカイガーデン合算)もの来場者があります。

そしてさらに、ランドマークタワー以上に人を集める建物があります。

それは、六本木ヒルズ。
おそらく最も資産価値の高い土地に立つこの巨大ビルには
年間約4300万人(2006年度)が足を運び、その圧倒的な存在感に身をひたすのです。

なぜ、人はこうも“すごい“に魅了されるのでしょうか。

その答えは、“自分もすごくなりたいから“だと僕は考えています。

人は誰しも根底に、自分の存在感を高めたいという欲求があります。
そのため、際だってプレゼンスのあるものに接することで、
自らのプレゼンスも高めようとするのです。

つまり、ベンツも、ルイ・ヴィトンも、ロレックスも、
みなそこにプレゼンスがあるからこそ求められ、
人々はそのエッセンスを吸収しようとするのです。

もっとも、人がプレゼンスを求めるのは、商品やサービスにおいてだけではありません。
たとえばコミュニケーションにおいても同様でしょう。
夫婦でも、同僚でも、上司・部下でも、互いの足りない部分を補い合う関係だと、
自分の存在感が際だち、自然と高め合うよい関係が築けます。

それは企業と社員の関係であっても同じことです。
自分が役立っていると感じられる職場であれば、社員は高いモチベーションで働けます。
人間関係、労使関係においても、プレゼンスとは極めて重要なキーワードなのです。


[戦い方はいつも変化してゆく]

ブランディングは、企業にとって最も新しい戦い方です。

そもそも戦い方とは、有史以来、ずっとパラダイムシフトを続けてきました。

原始時代、人間同士はまず素手で争っていました。
しかし、石器が発明されると、いち早くそれを使った人間が優位に立ちます。

そして誰もが石器を使うようになると、
こんどはそのプレゼンスが失われ、戦い方はパラダイムシフトをはじめます。

次は刀です。しかし、刀もやがて飽和状態になります。するとこんどは銃です。
銃は大砲へ、大砲は戦艦へ、戦艦は戦闘機へ、戦闘機は核ミサイルへ。
プレゼンス崩壊、新技術開発というふたつの要因によって、
戦い方はどんどんパラダイムシフトしていったのです。

パラダイムシフトにおいては、先駆者が必ず最大の利益を得ます。
たとえば銃で思い出すのは織田信長。
火縄銃をどの大名よりも早く用い、戦国の世を席巻したことはあまりにも有名です。
戦艦ならイギリス、潜水艦ならドイツ、核爆弾ならアメリカと、
最新の戦い方を一番に用いた者が常に勝利してきました。

軍縮が進んだとはいえ、いま、核爆弾は地球上に4万発。
地球を崩壊させ、人類の歴史を無に帰する兵器など、
断じて持つべきではないのですが、まだこれほど大量にあります。
その飽和状態からパラダイムシフトした戦い方が、情報戦争です。
ここでもアメリカはインターネットという武器で、勝利者となりました。

戦い方は常に変わり、先駆者が最大の利益を得る。

この原則は、ビジネスにおいても同様です。
メディアシステムが深くお付き合いさせてもらっているホール業界においても、
これまで多くのパラダイムシフトがあり、その都度、勝利者が変わってきました。

パチンコという新しいゲームが生まれ、人気が出て店が増えると、飽和状態となります。
次に生まれた戦い方は、エアコンの導入です。
まだ1台が100万円もするような時代にエアコンを入れることで、
お客様が涼みにやってくる。

しかし、エアコンをどの店も入れてしまえば、当然そのプレゼンスはなくなります。
そこから女性用トイレの設置、玉共有・台移動の自由、高換金率の設定、
新台入れ替え、イベント・チラシ合戦と戦い方はパラダイムシフトしていきました。

そして次なる戦い。それこそがブランディングなのです。

では、ブランディングをどのように築いていくのか?
後編では、その具体的な考え方と方法についてお話します。