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Presents Vol.13

弊社代表 安田のメールマガジン アーカイブです。

売上げ2番、生き様1番

[お金より、生きる輝きを優先する]


今期は売上げが下がってもいい。
そう言い放てる経営者など、まずいないでしょう。
たとえ横這いでも、苦虫をかみつぶす。
経営者を天国に連れて行けば、奈落の底にも突き落とす。
それほどに圧倒的な存在が、売上げです。

しかし、それだけに売上げのためなら何をしてもいい。
そんな考えがはびこっているように思います。
手段をいとわず、結果だけを性急に追い求める。
そのために社員をまるでロボットか人形のように操り、
目の前の数字だけをひたすら追わせる。

それでほんとうにいいのでしょうか?

有名なカーネギーの著作に、こんな一節があります。
ある牧場で、牛が草をはんでいました。
夕方になり、カウボーイがいつものように小屋に牛を集めようとしたところ、
一頭だけ入ろうとしない牛がいます。
後ろから力いっぱい押してもだめ。
仲間のカウボーイと引っ張ればなおいっそう牛はつっぱります。
仕方なく鞭を取り出して叩くと、
牛は血を流し、涙を流し、やっと嫌々ながら歩き始めます。

そこに、5才の女の子が現れました。
「そんな乱暴なことはやめて。私がその牛を小屋まで連れて行ってあげるから」
彼女はそう言うと、自分の指をかぎ型に折り曲げ、そっと牛の口の中に入れました。
すると、大の大人が数人がかりでも入れられなかった牛が、
いとも簡単に、しかも喜んで彼女の後を歩き、小屋に入っていったのです。

恐怖を与え、強制する。
そんなカウボーイのやり方でも、牛は小屋に入ったでしょう。
しかし5才の女の子は、牛を自らすすんで小屋に入らせた。
その結果、何の苦労もなく、
お互いが満足しながら目的を達成することができた。

どちらが望ましいかは、火を見るより明らかです。

目的達成のために、短絡的で粗野な答えしか持てない。
これがいまの多くの企業の姿ではないでしょうか。
売上げ増のために、社員を無理矢理動かし、生きる輝きを失わせている。
けれど、この5才の女の子がしたように、
互いが目的を共有し、納得し合うことができれば、人は自ら動くのです。
命令や強制によってのみ人が動く。そんな性悪説の呪縛を離れ、
そろそろ実り多い答えを見つけるときではないでしょうか。

会社と社員の両方を満足させる。
真の答えはここにあるのだと思っています。

[ブランドを作るのは、会社の生き様]

売上げ2番、生き様1番。
これは会社と社員の関係だけでなく、
会社と社会の関係にも言い当てられるのではないでしょうか。

企業の戦いはパラダイムシフトしました。
アイデアや技術の優劣で勝敗が決まる時代は終わり、
これからは好き嫌いで企業の価値が決まる。
つまり、ブランディングの時代です。

好きになってもらえれば、強い。
お客様はファンとして、会社を熱烈に支持してくれるからです。
しかし一方で、裏切ったときの反発も大きい。
嫌われたら終わり、という厳しい時代であるとも言えます。

そんな時代に、いかにしてお客様にファンになってもらうか。

それは、法人を人格ある「人」と考えれば、はっきり分かります。
つまり、人は人の心にこそ魅了されるのです。

その心こそ、ブランドです。

どんな理念やポリシーを持ち、それをどう貫いてきたか。
まさに生き様。
それこそが、人を惹きつけるのです。
たとえば誰もがよく知るベンツ、ルイ・ヴィトン、ロレックス。
そうしたブランドには間違いなく理念、ポリシーがあります。
本気の貫きがあります。だからこそ人は魅了されるのです。

人、モノ、金。これはよく言われる三つの企業資産です。
加えてこれからは企業の生き様であるブランドが極めて重要な資産になります。
感度の高い会社は、すでにそれを理解し、実行しています。

ホール業界におけるリーディングカンパニーといえる、
ある会社の経営陣とお会いさせていただく機会がありますが、
その度に心を動かされます。
そこには、理念があります。
ホールにまつわる負の側面を払拭し、業界を健全化していこう。
その想いの本気さがひしひしと伝わり、いつも心を揺さぶられます。

この理念こそ、お客様がこの会社に惹かれる理由です。
そして、重要な事実が、スタッフがみんな自社のファンだということです。
ホールに行くとよくわかりますが、みな生き生きと気持ちよさそうに働いている。
その場にいるだけでこちらもうれしい気持ちになります。

お客様にファンになっていただく。
そのゴールの前に、一番身近な存在であるスタッフが自社を好きにならず、
どうしてお客様に好きになってもらえるというのでしょうか。。

その求心力になっているのが、理念です。
共感できる理念を掲げ、その実現に向けて一体になって進んでいるからこそ、
この会社は魅力的で強い会社でいられるのです。
理念もなく、目先のお金を追いかける会社であれば、
スタッフも皆そっぽを向きます。
あれほどの組織にはなり得ないはずです。

誰もが共感できる理念を掲げ、本気で貫く。
次の時代を左右するブランドエクイティ(資産)とは、
そうやって初めて築かれていくものだと思います。

[本当の勝利は、生き様がもたらしてくれる]

少し前の話になりますが、トリノオリンピックで、
フィギュアスケートの荒川静香選手が金メダルをとりました。
あの演技を観たとき、僕は鳥肌が立ちました。
初めてフィギュアスケートを美しいと思いました。
素晴らしい演技を、ありがとう──。
心の中がそんな感謝の気持でいっぱいになりました。

他の多くの選手はいかに高度な技を決めるか、いかにミスを減らすか。
つまり、金メダルという勝利だけを追求しました。
しかし、荒川選手は以前と同じ曲目と演技内容を選択し、
点数にならないイナバウアーを取り入れることにした。
つまり、彼女が求めたのは、金メダルという結果ではなく、
いかに自分の美を最大限に表現するか。
いかに観客に感動を与えられるか。
彼女の目指したゴールはそこだったと思います。

そして、あの演技。鳴りやまぬスタンディングオベーション。

彼女は金メダルを2番に置き、
フィギュアスケートの本質である美を1番に置いた。
だからこそ、結果として金メダルをとれたのだと思います。

仕事も、人生も、
やはり1番に置くのはお金ではない。
いかに生きるか。
その生き様ではないでしょうか。
それこそが人に誇りを与えてくれる。
そして、その決心を持ち、貫いたとき、
望む結果もついてくる。
僕はそう思っています。