MEDIA SYSTEM

Presents Vol.09

弊社代表 安田のメールマガジン アーカイブです。

ダイヤモンドスタイルII

[社員が辞める理由――本人の問題]

辞める社員がひとりもいない。
それが僕の描く理想の会社像です。
しかし、せっかく入社した新入社員がひとりまたひとりと辞めていく──。
メディアシステムでも、かつてそうした状況がありました。
これには本人の問題、組織の問題、その両方があったように思います。

辞めていった社員には、「自己評価が高い」という共通項がありました。
メディアシステムでは年2回、自己評価表を記入します。
「積極的に仕事に取り組んだ」などの項目が30個あり、
それぞれ5段階評価をつけます。
離職者はいずれも突出して自己評価が高い社員でした。

自分は仕事ができると思っている。
しかし、他人はそこまで評価していない。
だから、出世なども同期に先を越されます。
すると自尊心が傷つけられ、やる気をなくし、結果的に辞めてしまう。
つまり、自己評価と他人評価のギャップに耐えられないのです。

そして、辞めるときは決まって、
「自分はほんとうは別のことがしたかった」と言い始めます。
ほとんどの場合、これは自分に対する言い訳。現実逃避です。
大人として自分の選択に責任を持てない。
そう宣言しているようなもので、
辞めた後も無責任なまま。
逃げ出すクセがつき、いつまでたっても一人前になれません。

もちろん逃げることが絶対に悪いとは言えないでしょう。
問題の所在が組織にある場合もあるからです。
しかし、本人が自分自身のみじめさと向きあわずに逃げた場合、
僕が知る限り、その人は決して幸せにはなれないと思います。

他人評価を受け入れることは、自分の欠点を受け入れることです。
たいへんな勇気がいります。僕も数多くみじめな経験をしてきました。
目を背けたくなる気持もよく分かります。
しかし、逃げてはいつまでたっても成長できないのです。
つらくとも、果敢に立ち向かっていく。
自分で道を切り開いていくほかないのです。
そして、周りもそんな人であれば必ず応援してくれるはずです。

自分と向き合えない弱さとは、
詰まるところ本人の課題でしょう。
しかし、会社としてもそこにはやはりケアが必要だと感じています。
僕自身もこの問題に気づいてから、
自己評価について皆で議論する場を設けるなど、取り組みを模索しています。
自己評価と他人評価のギャップに気づかせる。
不幸な離職を生まないためにも、
これは企業にとって欠かせない作業ではないでしょうか。


[社員が辞める理由――組織の問題]

さて、自己評価という本人の問題がある一方で、
離職には組織の問題もまたありました。

メディアシステムには、数年前、ふたつの営業グループがありました。
仮にそれをAグループ、Bグループとします。
それぞれが10数名の部下を抱えていましたが、
Aグループには離職者がほとんど出ないのに、
Bグループは離職する社員が後を絶ちませんでした。

両グループのチームリーダーはどちらも若く、仕事ができます。
しかも、人間としても魅力的です。
では、なぜそうした違いが生まれるのか。
それは部下に対する仕事の任せ方にありました。

Bグループのチームリーダーは、前半の営業は部下に任せ、
最後の契約時には必ず自分が訪問。
契約印をもらって帰ってきます。
もちろん、これは間違った営業手法ではありません。
初回は営業マンが説明して、最後は上司がクロージングする。
むしろ一般的なスタイルです。
高額商品であれば、なおさらこの傾向は強くなります。

しかし、Aグループのチームリーダーは違いました。
前半は部下に同行し、契約がまとまりそうだと感じた段階で、
あとは完全に任せてしまう。
その結果、入社して数ヶ月で1億円の契約をまとめる新人も現れました。
手法は常識破りですが、
その分、本人にとって大きな自信となるはずです。

一方で、営業のハイライトともいえる契約段階を奪われるBグループの部下は、
なかなか自分に自信が持てません。
この状況は上司と部下の関係性にまで影響し、
Aグループが互いを尊敬し合う関係が築けているのに、
Bグループはどこかギクシャクしている──。
これが高い離職率となって現れていたのです。


[若手を輝かせるダイヤモンド型の組織へ]

僕がこの事実に気づいたとき、あたまの中にひとつの像が浮かびました。
それは、「逆三角形」の経営スタイルです。
通常の経営スタイルは「正三角形」。
頂点に経営者がいて、底辺に新入社員がいます。
つまり、全体を支える役割をまだ足腰の弱い新入社員にやらせているのです。
これではどこかで無理が生じます。



しかし、Aグループのチームリーダーのように、
上司はあくまで部下を支える役割に徹すれば、
若手は伸び伸びと仕事ができます。
上司と部下の関係も良好になり、会社も活性化するはずだ――。
僕はそう考えました。

そもそも人生には角度が大切です。
最初の段階で大きな権限を与え、まず自信をつけさせる。
そうすればその人はグンと急角度で伸びます。
しかも後で少々つまずいても、
ベースに確固とした自信があれば、またすぐに立ち直れます。
新入社員に権限を与えることは、
人生に角度をつけるという意味でも極めて有効なのです。

しかし、そう思う一方で、入社1年目の経験の浅い人間が
最も権限を持つ会社が果たして健全なのだろうか。
そんな疑問も生まれました。やはりそれは行き過ぎだ。
最上層の新入社員の権限を少しカットする。
いちばん大きな権限を持つのは、もう少し下層の、
ある程度経験を積んだ3~4年目の社員にする……そう考えたとき、
逆三角形はダイヤモンドの形に変わりました。
「そうだ、ダイヤモンドスタイルだ!」。
焼き鳥屋で社員と飲んでいた僕は、思わずそう叫んでいました。



ダイヤモンドはこの地球上で最も硬く、最も価値ある鉱物です。
そして、あの独特のカッティングは、
下部から光を集め、それを上部から発光させるためのものです。
経営に例えれば、経営陣が下からサポートし、
若手をきらきらと輝かせる。
これこそがメディアシステムの目指す経営スタイルだと、
このとき僕ははっきりと掴み取りました。



僕はすぐにこの話をBグループのチームリーダーに伝えました。
そこには他の社員も同席していましたが、彼は恥ずかしげもなく大声で
「社長、わかりました!」と言ってくれました。

彼自身も、決して自分の利益のために働いていたわけではありません。
会社のために、部下のために貢献したい。
しかし、それを具現化する方法が見つからなかったのです。
実際、彼がダイヤモンドスタイルを心がけるようになると、
Bグループの離職率はグンと下がり、
上司と部下の関係も親密なものとなりました。

自分に自信が持てない。
これは本人にとっても、そして組織にとっても大きな損失です。
いかに早く自信を持たせるか。生き生きと活躍してもらうか。
そのためには、上司が部下を抑えつけるのではなく、
あくまで下から支える黒子となる。
部下が伸び伸びと働ける環境を作り上げる。
これがまず必要ではないでしょうか。

ダイヤモンドスタイルでは、
一番下を支えるのは経営者になります。
これはたしかに大変なことかもしれません。
しかし、経営者はやはりそれだけの荷物を持つべきだし、
持てる存在でもあるはずです。
経営者の仕事とは、社員を輝かせること。
その役目に徹するとき、
組織はダイヤモンドのような輝きを放ち、
至上の価値を持つ存在となっているはずです。