MEDIA SYSTEM

Presents Vol.08

弊社代表 安田のメールマガジン アーカイブです。

生きる、生かされる

[生きる尊厳は誰にも奪えない]

人材をいかに活かすか。
おそらくどの企業にとっても、最も関心が高い事柄のひとつでしょう。
今や人材開発ビジネスが花盛りであることもその証しです。
しかし、やる気や能力を引き出そうと躍起になればなるほど、
皮肉にも削ぐ結果となっている。それが現実です。

ライバル企業に勝つ。市場で勝ち残る。
言わずもがな、企業の論理では「勝つ」ことが最大の正義となります。
しかし、それ故に社員が望まないことも企業が強制する。
仕事内容、働き方、果ては立ち居振る舞いに至るまで、
事細かにルールを決め、社員を縛る。
多くの企業にとって人材活性とは、
いかに企業の敷いたレールの上を整然と歩かせるか、という発想です。

つまり、社員が企業によって「生かされている」状態。
働く意味も、価値も見いだせず、
目の前のさまつな事にばかり執着し、高い目標を掲げて「生きる」ことができない。
これはひとりの人間として、どう考えても耐え難いことです。

「企業の論理」という常套句があるほどです。
会社が優先するのは常に論理(ロジック)。
勝つためにどうすべきか、「考えること」ばかりが求められます。
そして勝とうとすればするほど、論理だけが優先されるのです。
その対極にある好きや嫌い、誰かの笑顔を見てうれしいと「感じること」。
そうした心の部分はどんどん封殺されます。
実際、それは人間性そのものの封殺に他なりません。
そんな状態でやる気を出させるなど、もとよりできるはずもないのです。

勝つことを目的に企業が社員をコントロールする。
つまり、人間の生きる尊厳を奪う。
いかに労働基準法で指示命令が保証されようとも、
そんなことが許されてよいはずがありません。
人は機械ではないのです。スイッチを押せば動くなどという存在ではないのです。
そもそも、社員の能力や可能性を狭めることが、
本人にも組織にも大きな損失であるのは明らかです。

管理職に対する誤解も、こうした現状を生む一因です。
管理という言葉にとらわれ、人を機械のようにコントロールすることが
自分の仕事だと思い違いをしています。
管理職の本来の仕事はマネジメント。物事を円滑に動かすための存在です。
当然、それには社員の心の部分まで踏み込んだ対処が必要なのですが、
そこがすっぽりと抜け落ちているのです。

もっとも会社員時代、僕も部下をコントロールしようとする上司でした。
生来、自由を好む性分にもかかわらず、
企業というシステムの下では、気づけば管理者になっている。
会社のために、という理屈で部下の生きる尊厳を奪っていたのです。
それに気づいたときは嫌悪感を覚えましたが、
一企業人としては、そうした負の部分にも目をつぶって生きるほかない。
そんな後ろめたさをいつも抱えていました。

しかし、そんな僕を踏みとどまらせてくれたのが、子どもの誕生でした。
子を持つ親なら、誰もがそう感じるはずです。
そこにはまぶしいくらいの「生きる」がありました。
人として最も大切にされるべきは、やはりこれなんだ。
たとえ親であろうとも、この子の生きる尊厳を奪うなど許されるはずがない。

無垢な子どもを前にすると、世俗的な期待など消え去ります。
ただ、今の生きる輝きをずっと持ち続けてほしい。
自分の信じるままに、生き抜いてほしい。願うのは唯一それだけです。
それほどまぶしい、生きるという尊厳。
親でも奪えないものを、企業が奪ってよいはずがありません。


[話し合うことで、会社は輝く]

生きる尊厳を大切にする。
経営者も社員も、上司も部下も、互いが尊敬し合える仲間となる。
今、メディアシステムが目指しているのはそうした組織運営です。
では、それが明日の売上げに直結するのか。
性急な結果だけを求める向きには不興を買う考えかもしれません。
しかし、僕自身の経営体験として、この方法こそが一見遠回りに思えて、
実際は企業にとっても社員にとっても、そしてお客様にとっても
最大の利益をもたらすものだと実感しています。

自由にのびのび働けることで社員のモチベーションが上がる。
それに比例して、会社や上司へのロイヤリティも上がる。尊重されている。
そう感じれば、人は相手のために一生懸命になる存在だからです。
その良好な関係は、お客様へのサービスの向上という形で波及します。
お客様の笑顔のためには、まず社員を笑顔にして、いきいきと働いてもらう。
それが結果的には企業価値を高めることに繋がるのです。

実際のマネジメントの現場では、「納得性」を最も大切にしています。
人は納得したことであれば努力できる。
反対に納得できないことに対してはいい加減です。
だから成功率も低い。納得には、話し合いが大前提です。
話し合い、相手を理解しようとつとめ、そのうえで納得してもらう。
そもそも自分を理解しようとせず、
頭ごなしに命令だけする相手を好きになれるはずもありません。

しかし、上司と部下の場合、
話し合いといえば結論ありきのものになりがちです。
部下が気後れして思いを伝えられず、結局は納得にまで至らない。
そうしないためにも、話し合いはまず上司の側が受け入れる心構えを持つ。
これが鉄則です。
こうした一連の取り組みは、最初は負担が大きいかもしれませんが、
続けることでより短時間で理解し合える関係性に高まり、
互いを本当の仲間と思えるようになります。

これからはもっと心の部分を大切にしよう。
勝つことだけが大切ではない。
企業の論理だけが正しいわけじゃない。
僕がそう言うと、きれいごとだ、霞を食って生きてはいけないと叩かれます。
なかには敵意むき出しで糾弾する人もいます。
しかし、僕に言わせてみれば、その怒りの発露こそ、
逆に心を求めている証拠ではないでしょうか。

一時期騒がれた敵対的企業買収。
その相次ぐ失敗で、結局は人の心まで
カネでは買えないことがはっきりしました。
働くことに心を取り戻そう。
そのうねりが着実に押し寄せています。
社員の心を大切にする企業が評価される時代が
もうすぐやってきます。
互いに生きる尊厳を大切にする。
互いが本当の仲間になる。
そのとき、その会社はどこにも負けないほど
輝いているはずです。